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Football Lover's Heart. コンサドーレ+時々冬スポーツ+まれに日記。背景画像は窓についた霜。

タグ:大勝

先週は伸二の札幌ラストゲームをCVSとして迎えていた。
思えば伸二の札幌ファーストゲームもCVSで、その試合(大分戦)も先週の浦和戦とおなじ1-1の引き分けだった。
札幌での最初と最後を見る事が出来なくて、スコアも全くおんなじで、これもひとつの縁だなと思いつつ、5年前の夏と今年の夏を比べて違ったことに思いをよせる。動員。

小野伸二が札幌に!という盛り上がりの中での最初の試合の動員は2万人だった。
当時J2で2万人だから上出来と呼ぶべきなんだけど、この数字が5年と一ヶ月の間で舞台がJ1に、動員が3万5千人という数字に変わっていた。

小野や稲本がいるから見に行こうか。
かつてのビッグネームを誘い文句にされていたチームは、今は現役の各国代表選手達を擁して、「コンサドーレ面白いから見に行こうよ」と言われるまでになってる(去年のオータムフェストでそう大声で携帯で喋ってる若者を見かけた)。

今日はサッポロファクトリーでPV、CVS友達に誘われたので久々に参加。
PVというと…盛り上がっているとは言えない客入りのPV会場で、ますます盛り下がるような試合を見せられて画面に向かって怒号炸裂 という雰囲気の悪さに耐えかねてそそくさと会場を後にした負の記憶が少なからずある。会場で応援している訳でもないのに野次を聞かされて嫌な気持ちになるのは不毛。なのでPVはここ数年すっかりご無沙汰していた。今回も負の記憶を新たにすることがないといいなと、正直思っていた。

何年ぶりに訪れたかわからないPV会場、そこには先週配られたユニフォームシャツやレプリカを着込んでいる人達が多数訪れていた。座席がなくて階段に陣取る人達や、3階4階から見ている人達も多くいた。前記したようにPV負の記憶を持つ古参にとっては、今日の試合を楽しみに、大勢の客様がチームグッズを身につけて大挙して訪れるという、その光景だけで目頭が熱くなってしまう。

しかして試合はどうかというと、負の記憶と真逆の展開を見せることになった。
早い時間での先制点では友達とハイタッチ。2点目の時は後ろの人達ともハイタッチ。ああ前半のうちに2得点なんて素敵な展開。けれど2-0は危険なスコア。後半になって大逆転の阿鼻叫喚が待っていないとは限らない。気を抜かないでGO。と思いながらも「これで清水から今年は7点目」と考える冷静さはあった。

「2-0は危険なスコア」が「相手にとっても危険なスコア」になる日が来ると誰が予想しただろう。進藤が「DFとは思えない華麗なるヘッド○試合ぶり○度目」みたいなすごいやつを決めてこれは固い!と喜んだのに、その後その美しいゴールがNHKのニュースでは省略されることになるだなんて。繰り返すゴールにハイタッチの輪は果てしなく広がり手当たり次第隣近所全員。8点目には「ハイタッチ疲れ」などという見たことのない世界に突入。ファクトリーのアトリウムがどよめきに包まれる。こんなPVかつてありましたか、いやあるはずがない。歴史的な試合のPVがファクトリーで行われてしまい、しかもその場にいた。こんな幸福があるだろうか。負の記憶どこいった。記憶は新たに、いい意味で上書きされたよ…!!

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試合の最中にビールを買いに行く余裕が出来た。かつてないことだ。
こんなことがあるもんだなぁと感心しながら帰る道、乗り込んだJRでふと前の席に座っている人を見ると、鞄に宮澤のアクキーがついていた。
チームグッズじゃなくって選手グッズかあ、しかも宮澤とはお目が高い、全国的には有名じゃなくても札幌サポとして誇るべき選手のひとり。全国にとってじゃない、札幌の私や貴方にとって有名で大事な選手を、さりげなく誇らしく普段の世界にあしらっている見知らぬ人がいること、こんな日常が当たり前のようになっていること。これを幸福と呼ばずしてなんという。

今は調子がいいから人が増える方向にあるけど、これから先勝ったり負けたりでも、このチームに、サッカーに、スポーツに熱くなれる人達がこれからも地味にでもずっと増えていってくれればいいなあって思ってて、それを色んな意味で堪能出来た今日は良き日。

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上が12年前の写真、下が土曜日の写真。
昔の写真の方がノスタルジックな感じがするのは、単にフィルムから起こしたデータだから。アナログ。

芝生席からスタンドになったり、電光掲示板が立派になったり、(レプリカ)ユニフォームが転写で4C表現になったりという変化はあるけど、厚別の景色はなんというか時を経ても根本的な雰囲気が変わらないなと、土曜日はとても思った。

開放感があって、空が高くて、風が強くて、ピクニック気分になりがちで、雰囲気緩め、その空間で「見せろお前の情熱~♪」。厚別はいつだって長閑だけれど逞しい。※天候環境的にドームより遥かに逞しくならざるを得ない



新さっぽろからシャトルバス乗って降りて歩いていくと、後ろから来た若い男女のグループが「え、テントめっちゃかわいいんだけど?」と、昨今のSNSにありがちな言葉をそのまま口語体で述べられる。長年見慣れたあの赤と黒の縦縞屋根テントも、若いサポーターにとっては「え、まって、やばない?」と言いたくなるso cuteな設備なのだという新発見。時代は変わる。

7月の厚別は初夏らしい爽やかさ…というには若干湿度高め。尤もこれが5月の末の突然の暑さのときのように30℃オーバーにならなかったことをまずは祝おう。

残念な感じだった天皇杯のあと、リーグ戦では3戦1分2敗。シーズンが半分終わって勝ち点27を獲得していても、「3戦やって勝ち星なし」という展開にモヤるほどにはJ1大人になった。
しかしこのままズルズルと行くと、せっかく登り続けている大人の階段を本気で転げ落ちる未来も見えてきかねない。転げ落ちれば早いし止まらないことを経験則で深く知っている我等。今日は絶対に勝って帰るよ…!!という雰囲気が、ユルユル基本の厚別でも感じ取られた。厚別なりの一体感。
事前に呼びかけられていた旗がゴール裏からもメインからもバックからも振られている。Y中のツイッターからの呼びかけでこれだけちゃんと揃うもんだなとそこに感心(かくいう自分も言われて荷物の中に積めた組)。

試合もよかった。スタメンが変わって、前節までの「ジンギスカン肉のみ野菜なし」みたいな肉しか出てこない苦行の食生活感がなくなった。JBの大人の献身と白井くんの若手の献身が双璧で、その間を縫って進藤がちゃっかり先制点。FWと見紛う素晴らしいヘッドを厚別で決める男である。
逆に事前に新聞で「厚別では相性がよい」とされたむっちゃんがシュート数の割に不発に終わってしまったのはありがちなフラグだったか。メディアで書かれると(またはサポーターが書くと)何故ああもフラグになっちゃうんでしょうね何事も。

それにしても白井くんは本当に素晴らしかった。黄色い声を上げたくなるレベル。私がミシャならブラボー大安売りだ。突破突破また突破、チャレンジアンドチャレンジである。そういう勇気が見たかったのよ(もちろんそんな突破が有効になるほど日頃からただしく練習していたのだろうとも思う 気持ちだけで勝てるものではない)。

ミシャサッカーのツボに嵌っている時の攻撃はまこと野生のヒグマアタック、その破壊力に心躍らせる。攻撃にかかっているときの観客の高揚感は、CVSやっているときによく感じるけれど、自分が観客のときでも同じことで、歓声は驚きと爽快感に溢れている(一方で守備時はしろくまのぬいぐるみのような素朴さを見せるのは如何なものか)。

厚別はベンチ椅子だからかドームよりパーソナルスペースが狭い感じで、周囲のお客さん環境に観戦の感想が左右されがちなので、ヤジ将軍などに陣取られると軽く詰む。あれはまじでつらい。けれどこの日は楽しげなお客さんたちに囲まれた。菅ちゃんの突破に「行け!日本代表!!」という声援は新しいと思った。前後の見知らぬ客様と楽しくハイタッチ5回。 



この週はとても悲しい事件が起きていて、自分はアニメ属性は現状ほとんどない人間なんだけど、ジャンル違えど自分と同じ制作の現場の人間に起きた不遇にやりきれない思いを抱えて暮らしていた。それでも試合でゴールが決まる時そういう悲しい思いだとかを一瞬でも忘れることが出来てしまう(実際は一瞬よりかなり長い秒数)。こんな瞬間があるから負けても応援に行けるし、何より前を向いて生きていけるのだろうと思う。

自分にとってスポーツ(サッカー)は、衣食住とまではゆかぬとも、クオリティオブライフの一端を間違いなく担うものなのだ。絶望を与えたのは人間だけど、希望を与えることが出来るのもまた人間なんだ。私はそう、信じている。

(生きる縁を奪われた人達の悲しみが癒える日が、果たしていつになるのか想像もつかないけれど、いつかその人達にもこの日自分が感じたような「これがあるから生きていける」と思える瞬間が訪れてほしいという願いを追悼に変えて書き記しておく)

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試合に勝って楽しいので流れで数年ぶりのビヤガーデンへ。
正しい札幌の夏。
ビヤガーデンの中ではレプリカのままのサポーターの姿がいたるところに。湘南サポの姿も少しあった。

隣の席の人達が話しかけてくる。
「今日はどこと試合だったのですか」「湘南です」
「結果は」
「勝ちました!」
「さすがですね!」

J1で勝って「すごいね」じゃなく「さすが」と言われる世界線に生きている2019年夏。変わる景色。

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